言語文化研究科 英語・英語教育専攻

教授

広実 義人 Hirozane Yoshito

音声の研究に必要なこと

私の専門は実験音声学といいます。音声学とは、我々が日々のコミュニケーションに使っている音声を言語的側面のみならずあらゆる側面(例えば、物理的、生理的、心理的な側面)から研究する学問分野です。私の専門はその音声学に「実験」という言葉がついています。したがって、研究にあたっては必ず実験を行い、実験結果に基づいて仮説を検証し、その上で自らの主張を展開していきます。

前述したように音声学はあらゆる側面から音声を研究する学問ですから、音声学以外にもさまざまな知識を必要とします。例えば、実験結果の分析には統計を使います。人文系の学生で数学が得意な人はあまりいませんが、だからといって統計学の知識なしに音声学の研究はできません。でも安心してください。統計学の全てを知っている必要はありません。自分にとって必要なことだけ知っていればよいのです。苦手な分野であっても必要に迫られればザックリと理解する能力。これが音声学の研究には必要だと思います。

深く考えることが大事

世の中には大した根拠もないのにまことしやかに語られていることがたくさんあります。実害がないのであれば、そういう言説を信じてもいいのかも知れません。でも、大学院で学ぶ人がそういう態度では困ります。学問の目的は「なぜ?」や「どうして?」を明らかにすることにあるからです。あらゆる言説に対して「その根拠は何?」と問う姿勢を常に持っていなくてはなりません。そういう姿勢を持って勉強していれば、研究テーマは自ずとすぐに見つかります。

今でこそ実験を実施して予想通りの結果を得られるようになりましたが、大学院時代に行った初めての実験では惨憺たるデータしか取れませんでした。その理由は、こうなるはずだという自分の思い込みが強すぎたからです。なぜ思い込みが強かったかというと、関連する過去の論文を広く読んでいなかったからです。実験の目的は仮説を検証することですが、まずは仮説自体が理に適った適切なものでなければなりません。そうでないと実験は失敗することになります。理に適った適切な仮説を立てるためには、先行研究に広く目を通して深く考えるというプロセスが必要です。物事を深く考えることは社会でもっと評価されていいと思うのですが、昨今では成果主義が横行し、目に見える結果を早く出すことが求められています。少なくとも大学院は成果主義ではありません。大学院で学ぶ人たちには深く考える習慣を身につけていただきたいと思います。