経営学研究科 経営学専攻

教授

中村 裕一郎 Nakamura Yuichiro

コーポレート・ベンチャリングの重要性を追究

専門領域は、成長戦略を中心とする戦略論、組織間関係を中心とする組織論です。より具体的には、「イノベーションの仕組みとしてのコーポレート・ベンチャリング」。コーポレート・ベンチャリングとは、大企業などによるベンチャー企業を活用したイノベーションのこと。ベンチャー企業との提携やベンチャー企業の買収を通して、社外の事業シーズを活用したり、社内にある事業シーズを社外にベンチャー企業として独立させたりすることによって、イノベーションを促進しようとする活動のことです。

元々大学の教員になる以前は、総合電機企業に勤務しており、そこでコーポレート・ベンチャリングの実務を担当していました。その際、コーポレート・ベンチャリングは重要であるにも関わらず、日本の大企業はコーポレート・ベンチャリングを行わないことに着目。その理由は何なのか、どうすればそれを解決できるのかという問題意識を持ったことが研究を始めた契機となりました。その後は大学院に入学して研究を深化させ、成果を博士論文にまとめ、その内容をベースに著書『アライアンス・イノベーション』を執筆しました。

著書『アライアンス・イノベーション』について
著書

2013年9月に白桃書房から出版され、2017年1月には5刷となりました。大企業にとってベンチャー企業との提携(アライアンス)は重要ですが、日本ではあまり行われていません。その原因は、ベンチャー企業との提携には通常の提携における課題の他に固有の課題があり、それを解決するのに日本的経営の特徴が障害となるためです。この課題を克服するために、意図的に提携の戦略的位置付けを明確にすることや、ベンチャー企業やVC(Venture Capital ※1)とのネットワーク形成の手段として、CVC(Corporate Venture Capital ※2)活動を行うことなどが重要であり、これらを実践するための組織として全社的新規事業開発組織の設置を提案する――というのが本書の概要です。

変革を続ける社会と経済に対応できる人材へ

AI(人工知能)など、ICT(情報通信技術)の進展に伴って、社会・経済は大きな変革期を迎えています。そうした状況を捉えてベンチャー企業を起業することには、社会・経済発展のエンジンとして雇用の機会を創造し、社会的問題を解決するという大きな役割が期待されています。また、起業家個人にとっても自己実現の機会になります。一方、厳しい経営環境にある企業としても、新しい事業を創造することができる人材、アントレプレナー(企業家)あるいはイノベーター(革新者)を求めています。経営学研究科に入学した学生には、実務家としてベンチャー企業を起業できる、あるいは企業内で新規事業を開発・推進できる能力を身につけてもらいたいと願っています。同時に、研究者としても企業や社会が抱える課題を解決するための提案ができることを目指してください。

自分の好きなことに没頭でき、それを仕事にできたら、そしてそれが世のため人のためになることであったら、これ以上の幸せはありません。一所懸命に勉強して、またいろいろな経験を積んで、自分が本当にやりたいことを見つけてください。それを実現するのは簡単なことではないでしょう。さまざまな知識や能力が求められるでしょう。でも心配はいりません。志を持って努力すれば、きっと修得できます。我々も最大限のお手伝いをします。

※1 ベンチャー企業への投資を行う投資会社やファンド
※2 VCを中心にベンチャー企業への投資や開発支援を行うことで新規事業の創出やシナジー効果を期する取り組み