
外国語学部日本語・日本語教育学科の専門教育科目「日本語史2」の講義では、平安時代の「いろはうた」を深く学び、その前後や背景を知るために、周辺の言語史資料を読みます。たとえば、平安時代の学者・歌人の源順(みなもとのしたごう)の「あめつちのうた」、また在家の僧であった西念(さいねん)の「極楽願往生歌」などです。
「あめつちのうた」「極楽願往生歌」ともに、「い」で始まって「い」で終わるなど、冒頭と末尾に同じ仮名を置いて詠んだ歌が書かれ、前者は47首、後者は48首が収録されています。
すなわち、
- あらさじと うちかへすらし をやまだの なはしろみづに ぬれてくるあ
(源順/原文には濁点なし、「あ」は畦) - イロイロノ ハナヲツミテハ 西方ノ ミタニソナエテ ツユノミヲクイ
(西念/「ミタ」は「弥陀」)
のようになっています。これらは、その時代の清音の網羅表になっていると思われます。
この、冒頭と末尾の文字が同じという、一種の言葉遊びを、12月21日(月)に授業でも行いました。まず、教員が趣旨を告げずに、各自が好きな仮名を1字決めるように指示した後で、前述のように、その文字を冒頭と末尾において、短歌1首を作ることを課題にしました。翌週、全員が1首ずつ提出。作者名を伏せた一覧とし、「これぞ名作」と思うものを投票で選びました。
票数は分散しましたが、「ろ」を冒頭と末尾においた1首「六の坂 朝はひとりで 急ぎ足 くだりみんなと 語らいの帰路」が最高の5票を獲得しました。目白大学の学生の日常が鮮やかに切り取られ、共感を得たのでしょう。この1首を、専門教育科目「書道」を担当する岩田有希子講師が揮毫しました。
こうした取り組みは、日本語史への知識・関心を養うとともに、ちょっとした「歌ごころ」を呼び起こす契機になったことと思います。