外国語学部

日本語・日本語教育学科

Department of Japanese and Japanese Language Education 新宿キャンパス

グローバル・ナレッジシリーズ

第32回「現代日本つながり論 若者たちは何に幸せを見いだそうとしているのか」

  • 現代日本つながり論1
  • 現代日本つながり論2

7月26日(木)、日本語・日本語教育学科専門科目「日本の言語と社会1」の授業で、月刊『ソトコト』編集長の指出一正氏をお招きし、「現代日本つながり論:若者たちは何に幸せを見いだそうとしているのか」とのテーマで、指出氏ご自身が日本各地で現地の人々と関わるなかで感じてこられた、若者の間に拡がるローカル志向の特徴と背景などについて語っていただきました。週5日は社外を飛び回っているという指出氏ですが、当日もお仕事で訪れていた高知県からわざわざ駆けつけてくださいました。

はじめに、東京をモデルに地域や個人の暮らしをデザインしようという、「東京にほめられること」に価値の中心を置く風潮の中で青年期を過ごした指出氏自身が出会った、東京にはない地方の多くの魅力を全国に知ってもらいたいとの気持ちが今のお仕事につながった経緯を、今もご趣味である渓流釣りを例に話されました。続いて、実際に各地で起きているそうした地域の資本を活かした社会企業の立ち上げの事例として、都会のエリートエンジニアだった若者が島根県の離島にある海士町につくった教育機関に、大手企業から多くの研修の依頼が寄せられるようになったケースが紹介されました。  

こうした地方との新たな関わり方を示すキーワードとして、移住や観光とは違った地方や地方の人々との個人的な関わりをもつ人々を表す「関係人口」 についても話が進み、指出氏も関わっている国や地方自治体の事業でこの概念が重要項目としてすでに取り上げられており、「関係人口」の関与が地域での継続的な交流や社会資源開発につながっていることなどが、島根の「しまコトアカデミー」、奈良の「むらコトアカデミー」などの事例を交えてありました。また、外部の人々との関わりをきっかけに、従来の役所主導の観光協会ではなく、地域の若者たちが地域の特産物などを全国に向けて主体的に発信した結果、新たなビジネスや居場所づくりにつながった宮崎県や長野県でのケースが紹介され、自分ごととして地域のことを考えることで若者自身だけでなく地域が元気になっていく事実が示されました。  

最後に、そうした地方で幸せを見つけた若者たちに共通する特徴として、自分たちが未来を作っているという手応えを感じていること、自分ごととして楽しんで地方と関わっていることがあるとのお話がありました。そうした人材には自ずと外部からの関心や支援も寄せられやすくなる、そういう気持ちを持つことが大切とのことでした。

お話で紹介された数々の事例とあわせ、グローバル化への対応が叫ばれる今だからこそ、身の回りにある物事に目を向け、自らの目で見たものごとを基準に自分のまちを見ていくことが「地域の解像度を上げる」ことになり、世界に訴求する地域の魅力の発見につながっていくのだ、という指出氏のメッセージは、地域との関わりについての学生たちの見方を大きく変えるインパクトを持ったものだったと思います。

学生の感想より
  • 自分の育った地域の魅力を自分自身よく知らなかったのだとわかった。
  • 身近なことを考えて行動することが世界につながっていくとお聞きし、自分も世界と関わりうるのだと感じた。
  • 視点を身近なことに絞ることこそ物事の本質をみるうえで必要だと分かった。
  • 関係人口として第二のふるさとができ、都会では知ることのできない魅力を知れるというのはとても良いことだと思う。
  • 地域のことを自分ごととしてとらえ関わっていく視点が自分にはなかったので、大変勉強になった。
  • 自分も、地域について楽しみながら関われることを見つけて行動したいと思った。