外国語学部

日本語・日本語教育学科

Department of Japanese and Japanese Language Education 新宿キャンパス

グローバル・ナレッジシリーズ

第36回「地方のゲストハウスで異文化交流の場をつくる」

12月20日(金)、日本語・日本語教育学科専門科目「異文化接触論」の授業に、長野県須坂市で「ゲストハウス蔵」を営む山上万里奈氏をゲストスピーカーに迎え、近年増えている外国人宿泊者を受け入れてきた経験などについて話していただきました。

国内と中国で日本語教師としてキャリアを積み、その後旅館業を経験したことがきっかけとなり、2012年から今のゲストハウスを開業し、オーナーを務めている山上氏ですが、日々海外からのゲストを迎える中で、生活背景や文化の面で日本との違いを実感することが多いといいます。
たとえば、欧米でゲストハウスが早くに浸透した背景には、有給休暇をまとめてとるのが常識となっているなど、長期の休みを取りやすい環境があることがあり、実際1か月間滞在するゲストも珍しくないとのことでした。また、菜食主義のゲストも多く、そうしたニーズを満たすには一泊の宿泊費が安く、キッチンのついたゲストハウスが好都合なのだそうです。

安価であることの他に、ホテルや旅館との大きな違いとして、ゲストハウスでは宿泊者や地域の人々との交流が生まれやすいとのお話もありました。その日にたまたま一緒に泊まることになった各国からのゲストたちが、一緒に食事を作って食べたり、地元の行事に参加したりと、いろいろな形で交流が生まれている事例が写真とともに紹介されました。
そうしたゲストの多様性は国籍だけではなく、さまざまな性認識や身体的ハンディキャップをもつ人たちもいますが、それらを自分の個性として屈託なくコミュニケーションをとるゲストたちの姿勢に感心することも多いそうです。こうした違いをバリアと感じることなく交流できるのがゲストハウスの良いところだと山上氏は強調していました。
また、ゲストハウスを拠点として地域の人々がゲストのために特別なもてなしをしてくれることが多いのが、地方のゲストハウスの良さだとのお話しがありました。

山上氏がゲストハウス経営を志す原点となったのが、中国での日本語教師時代に、当時国どうしの関係は悪かったにもかかわらず、山上氏個人に対する非難は一切なく、個人として接してもらえた経験だったといいます。政治レベルでは難しい問題があっても、個人どうしのつながりは作れる、ゲストハウスにはそうした関係づくりの場になり得ると感じたことが、山上氏がこの道に入るきっかけとなったとのことでした。

最後に、日本社会はまだルーツや文化の多様性を受け入れる素地ができておらず、そのために気づかずに差別的な待遇を外国人に対してしていることも多いことが山上氏の知人の事例から話されました。
その意味で、日本は訪れるにはいい国だとの認知が拡がっているものの、外国人には住みにくい国だろうと実感することも多いとのお話がありました。まずは、自分の意見をしっかりと言えるようになることが今後の日本人に大切だと山上氏は最後に強調していました。

学生の感想より
  • ゲストハウスならではのコミュニケーションが生まれると知って、泊まりに行きたくなった。
  • ゆとりのある接客ができる田舎の方がゲストハウスという業態が生きるのだと感じた。
  • ゲストハウス開業を実現した山上さんの行動力はすごいと思った。
  • 文化の違いはあっても、交流の場を持つことで理屈抜きに仲良くなれるのだと思った。
  • 日本は外国人にとって訪れるには良くても住みにくい国だと聞き、偏見をなくしていく努力の必要性を感じた。