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社会情報学科

Department of Social Information 新宿キャンパス

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社会情報学科「ファッションブランド戦略論」授業レポート "ナイガイブランド戦略"

ファッション関連企業の方を講師としてお招きし、企業のマーケティング戦略についてご講演いただく「現代社会1」(ファッションブランド戦略論)」。6月11日(金)の講義では、株式会社ナイガイ(リテール部)酒井義正氏にお越しいただき、『100年企業、次の100年への挑戦』と題してご講演いただきました。

「ナイガイ」の授業レポート

同社は1920年(大正9年)に創業された会社で、2020年に100周年を迎えました。創業者のお二人は当時、アメリカのニューヨークで一緒に働いており、現地の靴下の品質の高さに驚かされたそうです。「この靴下を日本に持ち帰ったら、必ず生活必需品として役に立つ」と考え、弱冠32歳という若さで創業しました。ナイガイという名前は「内外」という言葉から来ており、日本国内だけではなく海外でも事業を展開したいという気持ちが込められているそうです。同社は創業当時からベンチャー気質が備わっており、その社風が100年経った現在でも息づいています。

講演は事前に受講生へ実施したアンケート(約140枚)に目を通していただき、その中から最も多かった6つの質問に答える形で、動画を用いながら分かりやすい言葉でビジネスの本質について解説いただきました。これにより受講生は自分たちが授業前に抱いていた疑問点が徐々に明らかになりました。

例えば、商品の販売や企画において「その商品の提供価値は何なのか」を考えることが重要です。同社では靴下という「使用するモノ」としての品質もさることながら、日々の生活において(憂鬱になりがちな月曜日の朝などに)心地良い、お気に入りの靴下を履くことで元気になるという「付加価値」づくりを重要視しています。この靴下の存在価値を掘り下げた結果『素足以上に足どり軽く』という言葉が誕生しました。人間にとっては素足が最も快適ですが、同社ではそれ以上の心地良さ(使用して体感できる価値と使用することで気持ちが高まる価値の身体的・マインド的な2つの価値)を追求するべく、挑戦し続けているそうです。さらに同社では消費者の「悩み」を解消することを目指しながら、ユニバーサルデザインという新たな市場を開拓しています。具体的にはシニア層とハンディを持つ方をターゲットとした「みんなのくつした」を発売しました。

帝国データバンクによると、100年以上存続している企業は全体の約2%とされています。講演の中で酒井氏から「不易流行」という言葉の重要性についての説明がありました。企業(商品)の存在価値を見つけるために、伝統(信用・品質)を守りながら自己変化(考え方・行動の変化)を繰り返し、挑戦を続けるという意味です。すなわち時代の変化に沿って企業も変化できるか、さらには社員全員がベンチャー精神を失わず、挑戦を続けることができるのかが大切となります。

そして創業100年目を迎えた同社は、新たな価値を見つけるとともに、次の100年に向けてさまざまな挑戦を行っています。新型コロナウイルスの影響とECサイトの普及により、リアル店舗の存在価値が問われています。そこで同社では、リアル店舗でなければ体験できない「価値・体験」を提供する戦略を打ち出しました。その一つが今年4月、東京ディズニーリゾートに近接するイクスピアリにオープンした「Happy Socks Candy Café」です。ここではカラフルな靴下とともに親和性のあるキャンディ(原宿にも店舗があるCANDY・A・GO・GO)の量り売りが体験でき、さらに店内でスイーツが楽しめるという、これまでにない顧客体験を提供しています。そのほかにも足の悩みをかかえるお客さまに寄り添うために、リアル店舗にてスキャナーで足を測定し、足の特性をカウンセリングすることで最適な商品を提供する「HitoAshi」という店舗をオープンしています。すなわち消費者に靴下を提供するだけではなく、足元のヘルスケアサービスという価値を提供する戦略を行うことで「人生100年時代に100歳まで自分の足で歩く」と願いが込められているそうです。

同じ会社で何十年も働いていると、どうしても企業側(作り手)の目線で考えてしまうことが多くなりがちです。酒井氏からは、常に「お客様になった場合、どう感じるのか」の目線を持ち、商品の企画・開発・プロデュースを行うことの重要性をお話いただきました。靴下という商品の奥深さを学ぶとともに、創業100年という老舗企業に安住することなく挑戦を続けていることに改めて驚かされる貴重なご講演となりました。

(社会情報学科3年 今村、長谷部、余川)