新着情報

  • めまいの病院は専門医の目白大学耳科学研究所クリニック
  • 耳より小話
  • イベントは終了しました

耳より小話【その11】

大地震のあとに「また揺れている気がする」
ーそれは多くの人に起こる自然な反応です

大きな地震のあと、「地面が動いていないのに、自分が揺れているように感じる」といった感覚を覚える人が少なくありません。

目白大学耳科学研究所クリニックが2024年元旦の能登半島地震後に、石川・富山・福井の3県にお住まいの方を対象に行った調査では、約4割の人が新たにこうした感覚を経験していました。

この「自己運動感覚(self-motion sensation)」の特徴は、

  • 体がゆらゆらと揺れる感じ
  • 続いても1分未満
  • 座っている・立っている・寝ているなど、静止しているときに感じる
といったもので、半数の方がこの感覚に対して「不安や恐怖」を感じ、約2割の方は日常生活に支障があると回答しました。

グラフ:地震後の「揺れる感じ」の特徴
なぜこのような感覚が起こるのか(考えられる仕組み)

現時点では不明な点が多いのですが、下記のような理由が推察されています。

  • 地震の強い揺れによって、体のバランスを保つ仕組み(内耳の前庭や、脳での感覚の統合)が強く刺激され、混乱を起こします。そのため脳が「まだ揺れている」と感じてしまうことがあると考えられます。
  • 「また地震がくるかもしれない」という不安が強いと、体の感覚が敏感になり、わずかな刺激でも揺れているように感じやすくなる場合があります。
ほとんどは自然におさまります

私たちの調査では、約6割の人が2週間以内に症状が消失していました。
多くの場合は一時的なもので、身体の異常ではありません。
ただし、2か月後も約4分の1の人に症状が残っていたことから、揺れの感覚が長く続く人も一定数いることがわかりました。

グラフ:症状消失までの時間
不安が長く続くときは、早めの相談を

この研究から、「揺れの感覚に対する不安や恐怖」が症状の長期化に関係していることが示されました。
めまいの専門医(耳鼻咽喉科)や心理的支援を行う医療機関に早めに相談することで、症状が軽くなることがあります。
無理に我慢せず、「体のめまい」と「心の反応」の両方をケアすることが大切です。

私たちの取り組み

被災地では命に関わる重い症状の治療が優先されるため、めまい症状で受診しづらい方も少なくありません。
目白大学耳科学研究所クリニックでは、地震後にめまいを感じる方を対象に、大きな地震後に感じる「めまい」のオンライン健康相談(無料)を受け付けています。
一人で悩まず、気になる症状があればお気軽にご相談ください。

大きな地震後に感じる「めまい」のオンライン健康相談(無料)

図*はTsunoda R, Kamo T, Dobashi Y, Fushiki H. Characteristics of self-motion sensation after major earthquakes: An internet survey. PLOS ONE 2025 https://doi.org/10.1371/journal.pone.0330450より改編