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ビジネス社会学科・藤波大三郎教授の連載記事「タテ社会と賃金 日本人を貧困に追い込む社会構造の問題点」が幻冬舎ゴールドオンラインに掲載されました

  • 資料:経済産業省「企業活動基本調査」「海外事業活動基本調査」、労働政策研究・研修機構ホームページ、活用労働統計(2018年版)相関係数-0.90(P値<0.05)(図は筆者作成)

ビジネス社会学科・藤波大三郎教授の論文を基にした連載「タテ社会と賃金 日本人を貧困に追い込む社会構造の問題点」が、幻冬舎の総合情報Webサイト「幻冬舎ゴールドオンライン」で始まりました。
「幻冬舎ゴールドオンライン」では、さまざま特集を掲載しており、日本金融学会の会員でもある藤波教授の論文「タテ社会と賃金」を一般向けにリライトした記事が、9月5日より3回にわたって掲載されます。

連載第1回のテーマは『日本人の賃金 貧しさからの脱却を困難にする「タテ社会」の構造的問題点』です。
上図のように、平成時代に企業は労働分配率を引き下げて賃金を抑え、利益を内部留保とし、それを用いてリスクは大きいが収益性も高い海外でのビジネスを増加させ、2022年3月期には過去最高の利益を上げるようになりました。しかし、この労働分配率の引き下げ方は行き過ぎであるとされ、現在では政府も、毎年、企業の経営者に賃上げを要請しています。しかし、根本的な問題は企業のしくみ、つまり、上司と部下といった「タテ社会」の一部に行き過ぎがあり、企業が閉鎖的になっているからではないでしょうか。
「タテ社会」とは、女性で初めて東京大学の教授となった、故 中根千枝東京大学名誉教授が提唱した言葉であり、上下の関係が強く、横の関係が弱い社会のことを指します。

2022年4月から、高校の家庭科で金融教育が始まりましたが、その背景となったビジネス社会の変化がわかる内容となっています。

注)
労働分配率: 労働分配率とは、経済活動によって生み出された富が、従業員にどれだけ配分されているかを表す指標であり、賃金分配率とも言います。
内部留保: 企業の純利益から、税金、株主への配当金などの社外に支払う分を差し引いた残りで、会社が稼いだ儲けの蓄えのことです。

【参考】論文要旨:
我が国ではバブル崩壊後、銀行と大企業の間の株式持合いとメインバンク制が消滅し、それと入れ代わるように外国人投資家が増加した。企業は株主中心の経営を行い、資本への分配率を増やして自己資本比率を上昇させる一方、労働分配率を下げた。その理由は、労働市場は終身雇用の慣行と年功序列賃金制で流動性が低いため、転職が困難な従業員が賃金より雇用を選んだからである。わが国は流動性の高い株式市場と流動性が低く円滑な労働移動が困難な労働市場の制度的なミスマッチのため、米国以上に労働分配率が低下して賃金が低下した。これを是正するには、株主の姿勢がESG投資へと変わること等もあるが、やはりわが国のタテ社会の封鎖性に由来する流動性の低い労働市場の一部を流動化することである。