心理学研究科臨床心理学専攻

2017年3月修了(臨床心理士・公認心理師/しろかねたかなわクリニック勤務)

小林 桃子 さん

キャリアアップ 公認心理師 研究・実践 社会人 臨床心理士
医療の視点から患者さんに寄り添ったケアを研究

大学を卒業後、医療・製薬業界の市場調査を行う企業に勤務していました。その中で患者さんの背景に基づくケアや心理的サポートが求められる現状があること、それらの支援はご本人とご家族の生活の質に大きく影響することを知りました。医療分野という専門性を身につけて新たなキャリアを構築したいと考えていた時、医療の現場に関わる心理職の存在に気づき、大学院へ進学。大学院で学び出会ったのは、終末期医療の課題に欧米で取り組まれた「アドバンス・ケア・プランニング(以下、ACP)」です。終末期の患者さんが治療などの意思決定を行う際に、納得できる意思決定を支援するためのプロセスで、欧米では一定の効果が見られています。調査を進めていくと日本人の思考や価値観に見合う実施方法の検討が必要であることが明らかになり、その方法について研究していきました。今ではACPは日本でも重要性が広く認められるようになっています。当時は先行研究が少なく、国内外の論文から研究テーマに関連する文献を探し出し、仮説を立てることにも一苦労でした。手探りで進めつつもACPの日本版尺度を作成し、300名以上にご協力いただいてアンケート調査を実施。作成した尺度の信頼性・妥当性を実証できました。

先生方の経験に基づく言葉から心理臨床の根幹を知る

大学院の授業で印象に残っているのはケースカンファレンスの授業で、幅広い領域を専門とされる先生方からの数々の言葉は、私にとって大切なものです。論文を読むだけでは得られない知見を惜しみなく教授いただき、先生方の専門領域について知識を深められるとともに、根幹となるクライエントへの向き合い方は共通していると実感。「常にクライエントと白紙の状態で会う」という先生からのアドバイスは、先入観を持たずにクライエントの話にしっかり耳を傾けることであり、臨床においての重要性を痛感しています。大学院で学んだクライエントへの向き合い方は、対人援助の基盤となっています。また、在学中に出産のために休学し、子育ての多忙さで復学をあきらめようと考えたことがありました。そんな時、論文指導教授からのご支援はとても温かく、私が復学して修了するまで先生は見守ってくださいました。

研究と対人援助を通して多くの方の日常を豊かに

大学院修了後にキャリアチェンジをすることができ、認知症予防を目的としたプログラムや認知症早期発見に向けた認知検査の開発の研究補助を行う一方で、精神科クリニックで心理臨床にも携わってきました。終末期は人生の中で区別されるものではなく、生まれてから成長し、生活していく上での人生におけるプロセスの1つです。これからも患者さん一人ひとり、千差万別の背景や症状に寄り添い、日常をより豊かに暮らしてしていく方法を一緒に考えていきたいです。