外国語学部

中国語学科

Department of Chinese Language Studies 新宿キャンパス

学科からのお知らせ

中国語学科:中国語キャリアチャレンジ支援「中国語を仕事にする」ー字幕翻訳という仕事を知る

1月15日(木)、外国語学部中国語学科で「中国語を仕事にする―字幕翻訳という仕事を知る」と題した講演が行われました。
この講演では、映像翻訳者で翻訳学校講師も務める本多由枝氏を講師に迎え、中国語を学んできた経験をどのように実社会の仕事につなげていくのかをテーマに、映像翻訳の現場で実際に行われている業務内容や求められる力について、具体的な事例を交えながら紹介されました。

講演の前半では、映像翻訳とはどのような仕事なのかについて、字幕翻訳と吹き替え翻訳の違いを軸に説明が行われました。字幕翻訳では、映像の中で表示できる文字数や時間に厳密な制約があり、「1秒につき4文字」という基本ルールの下、情報を削ぎ落としながらも意味や感情を正確に伝える工夫が求められます。入れられる文字数が限られているからこそ、「どこを省略しても問題ないか」「直訳を避けてどう言い換えるか」を瞬時に判断する力が必要であり、この文字数調整のスキルこそが映像翻訳の中でも特に難しい点だということです。

一方、吹き替え翻訳では、俳優の口の動きや芝居に合わせた日本語表現が求められます。字幕のように「見て理解できる」表現ではなく、音として聞いて自然に伝わる言葉を選ばなければならないため、別の難しさが生じます。実際の中国語セリフを例に、字幕用と吹き替え用で訳文がどのように変わるのかが示され、学生たちは「同じ内容でも目的が違えば日本語もここまで変わるのか」と熱心に聞き入っていました。

続いて、映像翻訳の仕事がどのような流れで進んでいくのかについて、具体的な工程が紹介されました。素材となる映像や台本が届いてから翻訳を行い、翻訳会社や制作会社によるチェック、クライアントからの修正指示を経て、最終的な放送・配信に至るまでには複数の段階と多くの関係者が関わります。映画とドラマではスケジュール感も大きく異なり、特に連続ドラマでは限られた時間の中で高い精度が求められるということです。

講演では、翻訳者養成の現場についても触れられました。本多氏の授業では、1週間で45分のドラマ1本を訳し切ることを目標にトレーニングが行われており、現場感覚を重視した指導がなされているということです。実際の業界では、経験を積んだベテラン翻訳者が週に2〜3話分を担当することもあると紹介され、仕事としての映像翻訳がいかにスピードと持続力を要求されるかが伝えられました。

後半では、中国語の学習経験をどのように職業につなげていくかという視点から、映像翻訳者に求められるスキルについて話がありました。高い中国語力は前提条件である一方、それ以上に重要なのが日本語表現力であり、「自然で伝わる日本語」を書けるかどうかが仕事の質を大きく左右するという指摘がありました。中国語字幕をオフにして映画やドラマを楽しむ人も多いですが、翻訳者を目指すのであれば、あえて他の翻訳者がつけた字幕を丁寧に読むことが重要であり、そこには言葉選びや省略の工夫、リズムへの配慮など、学ぶべき点が数多く詰まっているということです。

また、登場人物の感情や場面の空気を読み取る「芝居心」や演出的センスも、映像翻訳には欠かせない要素として挙げられました。字幕は「見て理解できる」書き言葉でなければならず、吹き替えは「聞いて分かる」言葉でなければならない。その違いを意識できるかどうかが、訳文の質を大きく左右するという説明に、学生たちも深くうなずいていました。

さらに、近年急速に進化しているAI翻訳についても言及がありました。映像翻訳、とりわけ映画翻訳の分野では、現時点ではAIが本格的に制作工程に入り込んでいる状況ではなく、翻訳の最終的な判断や表現は、依然として人の手に委ねられているそうです。一方で、翻訳者個人の作業においては、AIを補助的なツールとして活用する場面もあり、「言葉がどうしても出てこないときに、ぼんやりしたイメージを投げかけてヒントをもらう」「自分の訳を見直す際の参考として使う」といった使い方が紹介されました。便利さに頼り切るのではなく、人間にしかできない判断や表現の価値をどう保っていくかが、これからの翻訳者にとって重要な課題であることが強調されました。

講演の終盤では、日本語版制作に関わる仕事は翻訳者だけに限らず、翻訳会社、制作会社、配給会社、放送局など、さまざまな立場が存在することが紹介されました。中国語を学んだ先には、必ずしも一つの職業だけがあるわけではなく、複数の関わり方やキャリアの道が開かれていることが示され、学生たちにとって将来を考える上での視野を広げる内容となりました。

講演後の質疑応答では、翻訳の勉強方法や学生のうちにやっておくべきこと、仕事として続けていくための心構えに加え、近年中国語学科を志望する学生の間で人気の高い中国ドラマやアニメ作品についての質問も多く寄せられました。学生自身が「好きな作品」として日頃から親しんでいる映像作品を題材にした問いが相次ぎ、映像翻訳という仕事を、鑑賞者としての経験と結びつけながら、より身近なものとして捉えようとする姿勢がうかがえました。

※本講演は、「中国語キャリア チャレンジ支援特別企画」(2025年度目白大学特定学修支援団体チャレンジ企画)の一環として実施されました。
https://mejiro-chinese.jp/special2025/