保健医療学部

作業療法学科

Department of Occupational Therapy さいたま岩槻キャンパス

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作業療法学科 重村淳教授のコメンタリー論文が医学誌「Clinical Neuropsychiatry」に掲載されました

  • 2013年10月、福島県浪江町で撮影

作業療法学科 重村淳教授のコメンタリー論文「チェルノブイリと福島での原子力発電所事故(以下、原発事故)におけるメンタルヘルスの転帰からの教訓 (Lessons learned from the mental health consequences of the Chernobyl and Fukushima nuclear power plant accidents)」が、イタリアの医学誌「クリニカル・ニューロサイキアトリー」に掲載されました。コメンタリー論文とは、他者の論文内容を学問的に議論・批評するために書かれる論文のことです。

チェルノブイリ原発事故が旧ソビエト連邦で起きたのは、今から35年前です。この事故は史上最悪の原発事故で、公式発表では現場での作業従事者33名が亡くなった他、10万人以上が避難生活を送っています。長年の研究の結果、最大の健康影響は癌ではなく、メンタルヘルス(心の健康)への影響と報告されています。一方、福島第一原発事故が起きたのは10年前で、チェルノブイリに次ぐ規模の原発事故となりました。放射線被ばくによる死亡者はなく、被ばく線量はチェルノブイリのそれと比べて格段に低いと報告されています。しかし、周辺住民の避難生活は未だに続き、社会経済的な変化も相まって多大なストレスを受け続けています。

このようなタイミングで、ウクライナ(旧ソビエト連邦)の研究者たちが「チェルノブイリ事故35年後のメンタルヘルスと神経精神学的な後遺症:現状と課題 (Mental health and neuropsychiatric aftermath 35 years after the Chernobyl catastrophe: current state and future perspectives)」という論文を同誌に出版しました。チェルノブイリ事故の被災者は、心理的ストレスだけでなく、脳神経の放射線被ばくによって認知障害が生じているという仮説のもと、研究成果がまとめられています。

重村教授は、この論文を通じて両事故の研究報告を見渡し、チェルノブイリの研究では、認知機能に影響を与える要因(他のストレス、飲酒など生活習慣の変化)が十分に評価されていない限界を指摘しました。それゆえに、認知機能の障害が放射線の直接的影響なのかは、慎重な科学的検証が引き続き必要だと論じました。原発事故は頻繁に起きないものの起きた際の影響は甚大であり、万が一に備えて、両事故から得られた科学的知見を次世代に残す重要性を唱えました。